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“ONE PEACE”より
スリラーバークでのバーソロミュー・くまとゾロとの対決のあのお話です。 アニメがその話に迫ってきたので、掲載してみようかな、と思いまして。 SKIPは、最近原作を読み始めましたので、 いろいろと勘違いしている箇所があると思いますが、お許し下さい。 尚、原作者様・出版社様とは一切関係ございません。 それでは、SKIPのつたない文章でもいいよ、という寛容なお方だけどうぞ。 ひとつお詫びですが、「色々と騒ぎを起こしているんだ。 知らず知らず名が揚がるのは、何も船長だけではない」 という台詞をSKIPはゾロがくまの 「なかなか評判が高いぞ、お前達。 “麦わらのルフィ”の船には、腕の立つ−できた子分が数人いるとな」 を受け流したものだとばかり思っておりましたが、 アニメにおいて、「色々と〜」がくまの台詞と判明。 けれども、こちらでは訂正せずにゾロの台詞として掲載しております。 お許しくださいませ。 1 (ロロノア・ゾロ) 淀んだ夜が終わりを告げて、スリラーバークに朝が来る。 モリアとの勝負は俺達が勝った。 まあ、頭丸ごともっていかれかけたが、時間にも勝利したらしい。 影は戻り、誰も消滅することはなかった。 ルフィはぶっ倒れたままだけど。 すぐにチョッパーが手当てを始めたから、問題ないだろう。 問題はそっちじゃなかった。 七武海の一人、バーソロミュー・くまが現れたことだ。 「“海賊狩りのゾロ”お前から始めようか」 嬉しいね、強いヤツからのご指名とは。 ギリギリの状態なのに、な。 つい期待してしまう、相手にも自分にも。 “羅生門”に“三十六煩悩鳳”、 笑ってしまうぐらい俺の技が弾き飛ばされる。 それがヤツの能力だった。 勝負にならねェ。 けど、ケンカを買っちまったんだ、負けるわけにはいかない。 「もう俺は絶対に負けない」と、 俺の船長(キャプテン)に誓ったからな。 「お前達の命を助ける代わりに、麦わらのルフィの首を差し出せ」 くまが、そんなふざけたことを言ってきた。 だったら尚更、退けねェな。 「“獅子歌歌”!!!!」 手応えはあった。 だが、刀で斬ったそこから現れたものは血肉ではなく、金属だった。 ヤツは自分は「パシフィスタ」と呼ばれる、 政府の人間兵器なのだと明かした。 力で押し切るのは無理・・・か。 俺は瓦礫の上に座り込み、頭を垂れた。 「首はやるよ。 ・・・ただし、身代わりのこの俺の命ひとつで勘弁して貰いてェ」 ヤツは無表情だったが、思案しているのがわかった。 「待て待て、クソヤロー。 おめェが死んでどうすんだよ・・・!!」 コックが、俺とくまの間に割って入って来た。 俺が身代わりになるだの、みんなにはよろしく言っといてくれだの、 ぐだぐだと言い始めたので当て身を食らわせてご退場願った。 「バカが!邪魔すんじゃねェ。 こいつのご指名は俺なんだよ」 コックもアホなりに腹を据えて、飛び出して来たんだろう。 「不安にさせたか?悪かったな」 俺はコックの戦闘で汚れてしまった金色の髪を、くしゃりとかき回す。 「だがな、勝負はここからなんだ」 俺は刀を捨てて、最後の賭けに出る。 「ロロノア・ゾロ」 はっとする。 鷹の目・・・俺を呼ぶか。 「貴様を待つ。 この俺を超えてみよ」 ああ、超えてみせるさ、だから、俺は こんなところで負けるわけにはいかねェんだ。 ルフィも死なせねェ。 仲間達も、守り切ってみせる。 そして当然俺も、生き残るつもりだ。 「お前には地獄を見せる」 そう言ってくまは、ルフィから痛みと疲労の塊を弾き出してみせた。 「これに耐え切ることは不可能、死に至る。 そうしたらお前の首を、貰っていくとしよう」 「死なないかもしれないぜ。 俺はしぶといからな」 くまの口の端が、心持ち上がったような気がする。 可笑しいかよ。 「俺が凌いだら、こっちの勝ちってことでいいな?」 「・・・」 「退いてくれるな?」 くまを信じて、俺は苦痛の塊に手を伸ばした。 2 (バーソロミュー・くま) 「“海賊狩りのゾロ”、お前から始めようか」 ヤツを真っ先に指名したのは、間違ってはいなかったと思う。 “麦わらのルフィ”が動けない今、やはり 一番初めに潰しておかなければ厄介なのは彼だ。 「なかなか評判が高いぞ、お前達。 “麦わらのルフィ”の船には、腕の立つ−できた子分が数人いるとな」 一斉に照れる麦わらの一味。 可愛いと思ってしまう。 だが、ひとりだけ笑わないヤツがいた。 「色々と騒ぎを起こしているんだ。 知らず知らず名が揚がるのは、何も船長だけではない」 俺のおべんちゃらなんか、ゾロにあっさり流されてしまった。 麦わらの一味と島にいる者達の抹殺−世界政府の特命など た易いと思ったが、てこずるかも、という考えはどこかにあった。 で、案の定、死にかけているというのに、 俺に噛みついてくる男がいた。 “海賊狩りのゾロ”−何という凶暴さ、粗暴さ。 仲間が必死に止める。 ゾロの体も、もうボロボロなのだ。 だが彼は自分が止めたところで、 この状況がどうにかなるとは思ってはいない。 彼の持つ凶暴さとは対称的な冷静さだ。 そんな男が俺の前で膝を折る。 「身代わりのこの俺の命ひとつで、勘弁して貰いてェ」 なるほど、そうきたか・・・。 そこまでして護るか、船長を、仲間を。 「ルフィは、海賊王になる男だ!!!」 ・・・それが、お前をここまで衝き動かすのか。 ゾロ、お前がより信じているのは、自分が世界一の剣豪に なることなのか、それとも麦わらが海賊王になることか。 その答えごと、この男を葬っても良いのだが。 ゾロの行動に怒って自分が身代わりになると 割って入った“黒足のサンジ”を退け、 刀を捨てて真っ直ぐに俺を見詰めてくるゾロ。 完全に俺の攻撃は、封じられてしまったらしい。 お前が仕掛けたこの勝負、受けて立つしかあるまい。 「身代わりになるというなら、お前がこの苦痛を受けろ」 俺はモリア達との戦いで蓄積されたダメージを、 麦わらの体から弾き出してゾロの前に差し出した。 ゾロは潔く自分からその試練を受け入れた。 俺は彼の死を確信していた。 だが・・・ヤツは倒れもしなかった。 体をふらつかせても、足を踏ん張っている。 左耳の三連ピアスを伝って落ちる、真っ赤な血。 ゾロは優しい俺を睨みつけ、 ぞっとするような笑みさえ浮かべてこう言った。 「俺の勝ちだな。 さっさと退けよ」 3 (モンキー・D・ルフィ) 「よし!あのバカ息子から俺が刀を奪ってやる! そして俺から刀を返してほしけりゃ、仲間になれ」 あれ?これ、懐かしいなあ。 ゾロを仲間に誘った、いや、半ば脅しだったかな? その時の俺の台詞だ。 暗闇の中に、海軍によって磔に されているゾロの姿が浮かび上がる。 そっか・・・あの頃の夢を見ているんだな、俺は。 あいつに会うまでは、そちこちで聞く“海賊狩りのゾロ” のおっかねえ噂を半分も信じちゃいなかった。 ああいうのは尾ひれが付いて、 大げさな話になっちまうもんだからな。 だが、ゾロは本物だった。 ぼろぼろになっていても、 あいつから感じる気迫はただもんじゃなかった。 それに、ゾロに救われたという少女が一生懸命に 伝えようとした状況で、あいつの心根も見えた。 あとは迷いなし! ゾロを助けて仲間にすれば、やっと “麦わら海賊団”の形ができるぞ。 ゾロに「船長(キャプテン)」って呼ばれて、 俺は初めて麦わら海賊団の船長になったんだっけ。 「このまま死ぬのと、どっちがいい?」 俺はもう一度、磔になっているゾロを誘った。 「断る」 ゾロが即答する。 ああ、そうだよ、ゾロはなかなか承知してくれなくて。 でも、結局仲間になって・・・。 「海賊になるくらいなら、死んだ方がましだ」 え?と、俺はゾロを見上げる。 銃声−。 ゾロの体を貫く無数の銃弾!? 「ゾロォーッ!!」 俺は自分の叫び声で、目を覚ました。 「大丈夫か、ルフィ?」 心配そうに俺の顔を覗き込んでいるチョッパーと目が合った。 俺は体を起こした。 「無理しないで寝てろよ」 チョッパーが慌てて、俺の肩に手を置き寝かせようとする。 「いや、それが・・・」 戸惑うぐらい、気分は爽快だ。 気分だけじゃない、体だって軽くてもうひと暴れできそうだ。 実際にその場でぴょんぴょん跳ねだした俺を、 信じられないといった表情でチョッパーが見ていた。 妙だ、いつもと違う。 あんなに激しい戦闘だったのに、痛みもなければ疲労もない。 「チョッパー!チョッパー!来てくれ!」 切羽詰まったサンジの声が聞こえて来る。 「ゾロかっ!?」 サンジの声の向こうに、ゾロがいると感じた。 さっき見た夢が・・・悪過ぎて、嫌な感じがする。 4 (サンジ) 自分なりの覚悟があって、俺は ゾロとバーソロミュー・くまとの間に立った。 なのに、邪魔だとばかりにゾロに当て身を 食わされ、俺はあっけなく伸びちまった。 あれからどのくらい経ったのか。 皆が目を覚まし無事を確認し合い始めた頃、俺はその場に いないただひとりの男を捜して瓦礫の中を走っていた。 「あの野郎、どこだ?」 冗談じゃねェ、俺を見くびりやがって。 見つけたら三枚にオロしてやるから、今は無事でいろ。 ゾロの覚悟の方が、俺を上回っていたっていうのか? それを認めそうになって、歯軋りをする。 ルフィがモリアに突っ込んで行く時、 「後の事は頼むっ!」 と叫んだ。 ゾロはその約束を守った。 バカみたいなやり方で。 「いた!」 思わず叫んでしまうほどほっとした。 「おどかしやがって・・・」 ゾロがしっかりと地面を踏みしめて、 見慣れた背中をこちらに向けている。 俺達が倒れていた場所を護るようにして。 まるで、この先へは行かせないと言わんばかりに。 いつもそうだった。 ゾロは敵には絶対に見せない背中を、 こうやって仲間を護るために俺達にさらすんだ。 一歩、前に出てな。 不覚にも男前だと感じてしまう瞬間だ。 「オイ!あの七武海どこに・・・?」 ゾロに近づくにつれて、瓦礫の赤みが濃くなる。 レンガか?・・・いや。 瓦礫の砂埃とその赤いものが混じり合って、 どす黒く不吉な色になっている。 これは・・・。 「血だ!何だ、この血の量は!」 慌ててゾロに走り寄る。 まるでバケツで頭から血を被ったみたいに酷い状態だ。 「オイ、おめェ、生きてんのか!? アイツはどこだ! ここで何があった!?」 ゾロがとても答えられる状態ではないと 見て取れるのに、俺は矢継ぎ早に質問した。 不安だったんだ、何か話していないと。 ゾロから何か言葉を引き出さないと。 「・・・なにも」 「え?」 「な゛かった・・・」 マリオネットの糸がぶっつりと切れたように、ゾロが膝から崩れた。 俺はそれを地面すれすれで、抱き留めた。 びちゃっと、まだゾロの体から流れ続けている血が飛び散る。 5 (サンジ) 大量の血が失われているせいか、 ゾロの体は怖くなるぐらい冷たく感じた。 「血を・・・血を止めなきゃ。 どこから・・・?」 焦る。 どこからだなんて・・・ ゾロの全身至る所から血が流れ出ているというのに。 俺はゾロの胸の傷口に手を当てる。 その手をゾロの手が掴んだ。 「ル、ルフィは?」 「無事だ。皆も、な」 それを聞いて、ゾロの手から緊張が抜けていく。 彼がこちらへ顔を向ける。 その目が、ぼんやりと俺を見た。 「な・・・んだ?アホコック・・・か?」 「アホは余計だ」 いつもは小憎らしいその口調も、今は俺を安堵させる。 が、その目が自分を映していないことに気がついてしまう。 「おい、おめェ、目が・・・?」 「てめェがやれ!」 俺の手を掴んでいるゾロの手に力が入る。 「足手まとい・・・になったら・・・てめェが切れ」 「何言って」 ゾロの手にますます力が入る。 「ルフィにはできねェ。 ウソップにもナミにも。 ・・・だから」 「バカ!目が見えねェのは一時的なもんだ。 こんな傷だって、おめェの得意な昼寝で治るだろーがよ」 ふっと笑うゾロ。 「悪ィ・・・」 俺の手を強く握っていたゾロの手から 力が抜けて、地面に落ちそうになる。 俺は慌てて、その手を掴む。 気を失ったか。 「チョッパー!チョッパー!来てくれ!」 俺は思い切り叫んだ。 叫ぶと戦闘で傷ついた全身に激痛が 走ったが、構わずチョッパーを呼んだ。 「来てくれ、チョッパー!早く!」 チョッパーの帽子が見えた。 頼りになる俺達の医者だ。 その後ろからルフィの姿が見える。 「ゾロかっ!?」 ルフィが、俺の抱えているモンに気がついたらしい。 (一番無茶していたあいつが一番元気がいいのは、ゾロ、 おめェがこんなことになったのと何か関係あるのか?) ナミさんも足場が悪いのに、駆けて来る。 ウソップが血相変えて。 ロビンちゃんも、フランキーも、あのガイコツ野郎も。 「皆がこっちへ来るぜ、ゾロ。 怪我してるのに疲れてるのに、おめェを心配して走って来る」 俺は、抱きかかえたゾロを見下ろす。 「だから、おめェだけ先に“麦わらの一味”を 抜けるなんて許さねェからな。 誰が切るかよ。 おめェがどうなっちまっても、 “麦わらの一味の海賊狩りのゾロ”に変わりはないんだぜ」 6 (ロロノア・ゾロとサンジ) その後、サンジは全てを目撃したというリスキー兄弟から ゾロに何が起こったのかを聞き出した。 バーソロミュー・くまによってルフィから 弾き出された苦痛の塊を、ゾロが受けたという。 (ウソップがルフィの新しい戦闘方法は、体に負担を かけすぎるのではないかと心配していたっけ) ルフィが無茶を続けていく・・・それは皆の懸念だった。 今回はそのルフィの無茶を、ゾロが全て引き受けてくれた。 自身の受けたダメージに加えてルフィのダメージ・・・ 幸いゾロの命も助かったが・・・。 「さーて、『めでたしめでたし』で 終わっていいものなのか・・・ねえ」 サンジはジムに、飲み物を運んで来ていた。 そしてゾロがトレーニングしている ところを、壁にもたれてじっと見ている。 「何だ?やりたいのか?」 サンジの視線を気にしていたゾロが、 持っているバーベルを彼に差し出す。 「俺はゴリラじゃねェよ」 と、サンジは煙を吐き出した。 「てめェ、ここで煙草、吸うな」 「はいはい」 と返事をしながらも、煙草は消さない。 「何、心配してんだ、コック?」 「あん?」 「次はあの手は使わない、いや、使えない、だな。 もう、見逃してはくれねェだろう」 「そうだな」 「だから」 ゾロはバーベルの両端に、バカでかい鉄の円盤を追加した。 「俺はもっと強くなる。 てめェらを不安にさせないように、な」 ゾロはバーベルを片手でひょいと持ち上げると、上下に振り始めた。 「おまえもルフィも無茶、し過ぎなんだよ」 サンジは出口へ向かおうとして、ふと足を止める。 「・・・あの時、何で俺だったんだ?」 「ん?」 「俺なら、平気で仲間を切り捨てられると?」 その話か、とゾロはバーベルを置く。 サンジがタオルを取ってゾロに放る。 「おめェ、ウソップのヤツを切ろうとしたよな、 エニエス・ロビーの騒動の後」 「てめェは同意してくれたな」 「・・・だから、なのか。 俺を見込んで」 「てめェはガキじゃねェだろ」 サンジは次の言葉を待ったが、ゾロはそれ以上 何も言わずにサンジが持って来た飲み物に口をつけた。 ゾロはいざ戦闘となると刀一本でも突入していく 乱暴なところがあるが、戦略家でもある。 会話さえも、ゾロにとっては戦なのか。 自分の攻撃がうまくかわされたような気がして、 猶もサンジは質問をぶつけてみる。 「立場が逆だったら? おまえ、俺を切り捨てたか?」 何だか女々しいことを訊いている、とサンジは慌てた。 ゾロは困惑した顔をサンジに向けた。 「いや、違うんだ、何でもねェ、忘れてくれ」 サンジはあいまいに笑って、ジムを出た。 「俺は、護られた相手がゾロだったことに、こだわってんのか?」 サンジはふうっと煙草の煙と一緒に、ため息も吐き出した。 サンジを目で見送ったゾロ。 「ふん、バカが眉毛と同じにぐるぐると余計なこと、考えやがって」 床に置いたバーベルに、太陽の光が反射して鈍く光っている。 「航海は順調。 麦わらの御一行様、全員無事! それでいいじゃねェか」 ゾロは再びバーベルに手を伸ばす。 いつでもその背に仲間を護れるよう、確かな力を手に入れるために。 (終) ※あとがき つたない文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 50巻のあのお話を、ひとつの想い(SKIPのアホな妄想)として 寛大に受け止めていただけたら嬉しく思います。 ・・・ん〜6の話はなくても良かったかな・・・。 ま、“おまけ”ということで、お願いします。 SKIP